「ここがものべの !? なーんにも無いねぇ」
高知の山深い寒村・茂伸(ものべの)村へ六年ぶりに帰省した主人公・沢井透(さわいとおる)と、
ふるさとのことをすっかり忘れてしまったらしい妹・夏葉(なつは)。
都会はおろか、他の人里からさえ隔絶された古びた空気の中、
家守妖怪 “あかしゃぐま”のすみ、幼なじみのありす、傘妖の飛車角――懐かしい面々との再会は、
錆び付いていた記憶の時計を動かし始める。
大掃除、山遊び、水普請、畑仕事、牛鬼の来訪……
少しも変わらぬ茂伸の暮らしを重ねるうちに、
やがて村に伝わる土着信仰 “ひめみや流” の夏祭りの夜が訪れる。
夜行市に賑わう境内に響く触太鼓は、祭りのクライマックス “面舞い” の始まりを告げるもの。
舞台に浮かび上がるのは、七面頬(ナナツラオ)なる大妖と人間たちとが織りなす歴史。
その舞の最中、夏葉は突然倒れてしまう。
「おにいちゃん……夏葉……体がヘンだよう」
一晩にして十センチ以上伸びた身長、体型の変化。
夏葉の身体を襲ったものは、まぎれもない異常成長だった。
(このまま、異常成長が続いてしまえば……夏葉の命は!)
果たして原因は病か祟りか――
焦燥の中、すみとありすの力を借りて、透は夏葉を救うための手掛かりを探し始める。