――主人公、鹿野上悠馬は魔法使い。
『自らの生きた時間(思い出)を代償に、他者のいかなる負傷をも治療してしまえる力』を持っている。
舞台は最果ての港町、風津ヶ浜に建つ少し不思議な学生寮、嵐山荘。
その地下室は繋がりを持っていた。
人ではないモノ達が住むという、色鮮やかな異セカイとの繋がりを――
少年はそんな些細(ささやか)な不思議に包まれながらも、当たり前の日々をまるで夢見るように緩やかに、過ごしていた。
“不思議な力を与えてくれる魔法使いの少女。彼女と共に夢の在り処と失ってしまったものの行方を探り”。
“ちょっとだけ素直じゃない幼馴染に、出不精な生活を世話されて”。
“学生寮の二階に住むグウタラなお姉さんと、不思議な世界を旅して回る……”。
そんな変わり栄えのしない時間を過ごしていた、ある日のこと。
満月が丸々とオレンジ色に煌く、夜のこと。
……空からひとりの少女が降ってきた。
「お願いします、魔法使いさん。どうか私を助けてください」
――そうして動き出す、ぼくらの時間。
吹き抜ける海風が頬を撫で……空からまっしろな羽根が降ってくる。
手と手を繋いで見上げた空に、ぼくらはまた恋することを、誓った。